太田裕己さん(33)
職業:財団職員
出身地:函館
現住所:東京
函館→札幌→アメリカ→東京
元プロ野球選手の王貞治氏が理事長を務める『世界少年野球推進財団』に所属し、世界に野球を広める活動をしている太田裕己さん。お父さんが気象庁に勤めていた関係で、函館、倶知安、江差、紋別と、幼少期から道内各地を転々とし、函館中部高校から札幌大学に進学しました。卒業後は札幌で養護学校の教員をしていた太田さんですが、25歳の時に公務員という〝安定した仕事〟を辞めて、東京へ。「給料よりも経験が大切だと思った」と話す太田さんに、財団職員という仕事や、数々の転校経験によって養われた性格、地元の友人との間に感じる感覚的なギャップなどについて伺いました。
取材・文章:阿部 光平、撮影:馬場 雄介、イラスト:阿部 麻美 公開日:2016年1月22日
〝世界中の子どもに野球を楽しんでもらう〟という仕事
━━最初に、今のお仕事について教えて下さい。
太田:世界少年野球推進財団( WCBF )というところで働いてます。世界各地から子どもたちを集めて、野球の大会を主催する団体なんですけど。
〝野球を世界中に普及させる〟っていうのが主な目的で、子ども達に野球を楽しんでもらって、そして好きになってもらおうという活動をしています。
━━その大会は、日本で開催されてるんですか?
太田:毎年開催地が変わるんですけど、日本が多いですね。他には、アメリカやプエルトリコ、カナダ、台湾などでも開催してます。
━━何カ国くらいの子ども達が集まるんですか?
太田: 15 、 6 カ国くらいですかね。去年はアメリカ、カナダ、ドイツ、デンマーク、マルタ、ペルー、あとアジアからは中国や韓国、フィリピンなんかからも子ども達がやって来ました。
━━具体的にはどういった大会なんでしょう? トーナメント形式で優勝国を決めるとか?
太田:一応、『世界少年野球大会』という名称なんですけど、実際にはキャンプに近い感じですね。午前中は野球教室をやって、午後からは開催地の観光をして、みんなで同じところに寝泊まりするみたいな。期間は 10 日ほどです。
━━なるほど。野球を軸に、各国の子ども達と交流を深めるような場なんですね。参加者というのは、各国の大会で優勝したチームとかを招くんですか? それとも応募で?
太田:日本の場合だと〝開催県枠〟と〝全国枠〟というのがあって、開催県枠は大会が行われる県が募集して、全国枠の方は僕らの団体で募集します。新聞とかに広告を出して、個人で応募してもらうかたちですね。応募多数の場合は、抽選で決めています。
━━募集人数は何人くらいなんですか?
太田:去年は千葉県で開催したんですけど、開催県枠で 35 人、全国枠は 30 人の計 65 人ですね。北は北海道から、南は沖縄まで、各地の子ども達が集まります。男の子だけじゃなくて女の子もいるし、中にはまったく野球経験がない子とかもいるんですよ。
━━野球経験がなくても参加可能なんですね。海外からの参加者も応募で集めるんでしょうか?
太田:世界野球ソフトボール連盟( WBSC )というのがあって、そこが世界中の野球団体の統括をしている組織なんですよ。そこに「こういう大会をやるので招待状を書いてください」という連絡をして、各国の野球連盟の方で参加者を選んでもらってます。作文を書いてもらって選考したりとか、各地の野球チームから推薦してもらったりとか、方法は様々ですね。各国からの参加枠は5人なので、5人一組で来てもらいます。
━━日本人の参加人数が多いんですね。開催地も日本が多いということですが、そもそも世界少年野球推進財団というのは日本の財団なんですか?
太田:そうです。元プロ野球選手の王貞治さんと、アメリカのホームラン王だったハンク・アーロンさんって方が設立した財団で、オフィスは東京にあります。
設立は 25 年前。ちょうど王さんが現役を退いて、監督になる前のタイミングですね。王さんは財団の理事長として、大会期間中はほぼずっと参加しています。
━━世界少年野球推進財団の中で、太田さんはどんな業務を担当しているのでしょう?
太田:基本的には大会運営に関するすべてのことをやってます。お金集めの部分から、各団体との連絡、野球教室の企画など。一応、メインの業務は海外とのコンタクトですね。
━━野球以外の部分、例えば各地での観光プランとかも財団側で企画するんですか?
太田:うちは野球教室の運営がメインです。子ども達をどこに連れていくとかは、地元の行事なので自治体の方々に任せることが多いですね。
━━去年は千葉県での開催だったということですが、具体的にはどういう場所に行くのでしょう?
太田:まずは千葉マリンスタジアムですね。プロ野球の試合がある日だったんですけど、試合前にグランドでキャッチボールさせてもらったりして。観客もいる中だったので、子ども達はもちろん、僕もテンション上がりました(笑)。
あとは、パークゴルフですね。パークゴルフって日本発祥の競技らしくて、海外にはないんですよ。その他だと、『房総のむら』という日本の伝統的な生活が体験できる施設だったり、成田山新勝寺にも行きました。
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