■知られざるシルク・ドゥ・ソレイユの実態
━━高堰さんは、どういった経緯でシルク・ドゥ・ソレイユに入られたんですか?
高堰:僕が大学の2、3年生の時に、シルクがマイケルをテーマに、新体操を取り入れたショーをやるってことで人材を探してたんです。それでパフォーマーの採用を担当している人が、うちの大学にも来てたんですよ。その時に、興味がある人は審査用に動画を撮るから、カメラの前でやれることをやってみてってことになって、宙返りとか感情表現とか、あとは筋トレなんかもやったりして。
当時は遊び感覚というか、面白そうだから受けてみようってくらいの感じだったんですよ。行けても、行けなくてもどっちでもいいやって。その時は、大学もあるし、大会で優勝もしてないし、まだいいかなーって感じだったので。
結局、大学卒業後はバイトを掛け持ちしながらプラプラしてたんですけど、1年後くらいにいきなり声がかかって。大会で優勝もできたし、大学も卒業したし、じゃあ行こうかなってことで入った感じです。
━━フリーターから、シルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマーになったってことですか! すごいサスセスストーリー(笑)。それは、大学生の時に撮っていた映像が、1年後に審査されて、採用に至ったということですか?
高堰:はい。一応、登録アーティストってところに名前が残ってて、声がかかった感じですね。ただ、映像を撮ってから1年が経過していたので、改めてやれることを送って、再審査って感じだったんですけど。
━━ちなみに、卒業してからの1年間はどんな生活をしていたんですか?
高堰:僕は新体操しかやってこなかったので、それ以外のことが知らなすぎるなって意識があったんですよ。それじゃまずいなと思って、バイトとかもやったことなかったんで、コンビニでバイトをすることにしました。
あとは、ブラインドタッチができるようになりたいと思って、テレアポのバイトもしてましたね(笑)。
━━「ブラインドタッチができるようになりたいからテレアポ!」って発想はすごいですね(笑)。では、新体操を離れて、社会勉強をしてたって感じなんですね。
高堰:はい。あとは、いろんな社長の話を聞くのが好きなんで、手当たり次第一緒にご飯とか行ってました。
━━起業とかに興味があったってことですか?
高堰:当時は、特にコレっていう目標はなかったんですけど、今は将来的に、自分で何かやれたらなぁって気持ちはあります。
━━今、シルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマーとして舞台に立ち続けていて、何か目標とかってあります?
高堰:英語があまりしゃべれないので、コミュニケーションが上手くとれてないんですよね。組織の中でも日本人同士で、こじんまりとしている感覚があって。会社からも、コミュニケーションって部分で日本人はまだまだ足りてないってことは言われてるので、改善していきたいですね。そういう部分をクリアできると、他のショーにも出演できるようになるし、給料も上がっていくので。
━━会社とか、組織とか、給料という話がありましたけど、舞台に立ってショーを演じることに対して〝仕事をしている〟っていう感覚はありますか?
高堰:あります。僕も最初は疑問に思ってたんですよね。〝嫌だと思う事〟が仕事だと思ってたんですけど、僕は新体操が好きで、それで給料をもらってるわけで、それって〝仕事〟っていうのかなって。だけど、組織に属して、上司とかがいる環境なので、今は仕事という感覚を持ってやってます。
━━ステージに立って、スポットライトを浴びている時って、〝魅せてる〟って意識ですか? それとも〝見られてる〟という意識ですか?
高堰:〝見られてる〟っていう意識の方が強いかもしれないです。〝魅せる〟ってなると気合入りすぎちゃうので。
一番前の列に綺麗な人がいたりすると、「あっ、見られてる!」って思って、頑張ったりとかします(笑)。
━━そうなんですか(笑)。僕、何度かシルク・ドゥ・ソレイユのショーを観に行ってて、エンターテインメント性だけじゃなくて、肉体表現として神秘的な側面もあるし、けっこう崇高な組織なんだろうなって、勝手に想像してたんですけど、意外と人間らしい集団なんですね(笑)。
高堰:けっこう、そんな感じですよ。「あそこの席にかわいい子いたね!」って騒いだりしてます(笑)。
━━その辺りは、日本とは違った寛容さがあるんですかね。反対に厳しい側面というのもあります? 厳重な決まりごととか?
高堰:う~ん。仕事に来てくれれば良いって感じですよ。ちゃんと舞台に立ってパフォーマンスが披露できれば。
だけど、その辺りも意外と寛容というか、「体調悪いんで今日行けないです」みたいなことがあっても、「あ~、わかったー」とか。
━━そういう雰囲気なんですね。やる時はビシッとやれば、OKという。
高堰:そうですね。そういう意味では、プロ意識が高いのかなと。