■シルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマーが送るラスベガスでの暮らし
━━高堰さんは、『シルク・ドゥ・ソレイユ』でパフォーマーをされているとのことですが、どのようなショーにご出演されているのでしょうか?
高堰:ラスベガスのマンダレイ・ベイ・ホテルというところで常設公演されている『ONE』というショーです。マイケル・ジャクソンをテーマにしたショーなんですけど、彼の手袋やハットなどをモチーフにした4人のキャラクターがいて、それぞれをパフォーマーが演じるといった内容になっています。
━━マイケル・ジャクソンのアイデンティティーになっているようなアイテムを擬人化して、それぞれのキャラクターに合わせた演目を披露するといった感じですか?
高堰:そうです。手袋をはめてるキャラクターがマジックをしたり、ハットを使ったジャグリングがあったり。スラックラインっていうベルト状のロープを利用したスポーツがあるんですけど、マイケルの靴を履くと、それができるようになったりとか、そういうストーリーを展開しつつ、彼の曲に合わせて様々なパフォーマンスを披露するって感じのショーですね。
━━その中で、高堰さんは、どんな演目に出演しているのでしょう?
高堰:「Smooth Criminal」という曲を使用した演目で、エアーマット使ったパフォーマンスを担当しています。ギャングスターみたいな格好をした7人が、曲に合わせてアクロバティックなパフォーマンスを披露する演目ですね。
ショーは全部で1時間半なんですけど、「Smooth Criminal」の演目は10分弱なので、あとは他のショーの手伝いをしています。台を引いたりとか、ショーで使う道具を入れたりとか。
━━そういう裏方的な仕事もやってるんですね。ショーは週に何公演あるんですか?
高堰:週5日で、1日に2公演です。
━━週に10公演って、けっこうハードですよね。「Smooth Criminal」に出演している7人は、ずっと同じメンバーでやってるんでしょうか?
高堰:最初7人でスタートして、去年ひとりが辞めたので、今はそこに追加メンバーが入っています。
━━ほぼ同じメンバーで、同じショーを長く続けているとなると、もうかなり意思疎通もできてるだろうし、クオリティも高まっていると思うんですけど、それでもやっぱり日々の練習は欠かせないものなんですかね?
高堰:「Smooth Criminal」で練習するのは週に2回だけですね。それ以外は、たまに自分の出番がある曲とかの練習に参加しますけど、そんなにハードなトレーニングはしてないです。もちろん、パフォーマンスが下がらないように、筋トレ専用のトレーナーについてもらって、各自プログラムをこなしたりってのはやってますけど。
ただ、監督がたまにこっそりショーを見てるんですよ。それで、手を抜いてるって判断されると、追加で練習を入れられたりしますね(笑)。
━━けっこう部活みたいなノリなんですね(笑)。
高堰:そうですね。思いっきり体育系のノリです(笑)。
━━「世界一のサーカス」とも称されるシルク・ドゥ・ソレイユですが、実際にパフォーマーとして参加してみて、どんな感想ですか?
高堰:シルクは…しんどいですね(笑)。
━━肉体的に?
高堰:そうですね。僕たちの演目は新体操の動きをベースにしてるんですけど、アクロバットな動きが多いので、『ONE』の中で最も心拍数が上がるっていう結果が出てるんですよ。それを続けているのはしんどいですよね。今はよくても、30歳くらいになったら体も動かなくなってくるだろうし。
━━シルクには、その後のキャリアは用意されていないんでしょうか?
高堰:コーチになる人とかもいますけど、まず英語が完璧に話せなきゃいけないし、いろんな演目があるので、新体操だけでコーチになるのはちょっと難しいですね。
━━パフォーマーとしての契約はどのようになってるんですか?
高堰:1年おきに、続けるかどうかの意志を確認する機会があって、続けたければその意向を伝え、辞める人はそこで辞めていく感じです。
━━日本と比べるとアメリカって、アーティストとかパフォーマーの社会的地位が高いってイメージがあるんですけど?
高堰:あまりそういう意識はないですけど、確かにパフォーマーって言うとスムーズに税関をくぐれたり、ビザの更新などもスムーズなので「パフォーマーって特別なのかな?」って思うことはあります。
━━なるほど。生活面についても伺いたいんですけど、今はどこで暮らしているのでしょうか?
高堰:ラスベガスで友達とアパートをシェアしています。
━━どうですかアメリカの暮らしは? 言葉とか苦労する点もあると思いますが。
高堰:英語は全然喋れないんですよ(笑)。先に行ってる日本人の先輩で喋れる人がいるので、その人が通訳をしてくれてます。
━━しゃべれなくても何とかなっちゃうんですね(笑)。生活に不自由はないですか? ラスベガスでの生活って、まったくイメージが湧かないんですけど。
高堰:ラスベガスって、電車がないんですよ。買い物へ行くにしても、車とかバイクになっちゃうので、あまりお酒とか飲みには行けないですね。なので、ご飯とかは自炊で、飲むのも家ですね。
基本的には、カジノで遊ぶか、ご飯を食べに行くしか娯楽がない街です。
━━旅行者のための街ですもんね。ちなみに、長期休みとかはあるんですか?
高堰:2週間休みが年に1回で、1週間休みが年に2回あります。
ビザの更新があるんで、日本には2週間休みでしか帰れないんですよね。なので、1週間休みは、他の国に行ったり、車でグランドキャニオンに行ったりとかしています。
━━率直に、アメリカでの暮らしは楽しいですか? ずっとアメリカに居たいって気持ちはあります?
高堰:そこはけっこう悩みますねー。日本の方が便利だし住みやすいので、正直帰りたい気持ちは強いです。ただ、シルクに長年いるとアメリカに住める可能性もあるので、それはそれで魅力がありますね。日本にもアメリカにも住めるってのは楽しそうなので、そういうのもいいかなと。