移動を続けながら感覚の鮮度を研ぎ澄ます
ファッションを軸にした自由でブレない生き方

高橋恵理さん(28)
 職業:編集者
出身地:函館
現住所:東京
 函館→ミラノ→東京

 
 
多くの女性が憧れるファッションの世界。遺愛高校からイタリア・ミラノのファッションスクールへと進み、現在は雑誌編集者として活躍する高橋恵里さんは、そんな女性たちの憧れを実現したひとりです。函館で撮影された映画『海炭市叙景』でのアシスタントを機に、東京でスタイリストの仕事に従事。その後、雑誌編集者として、様々なファッション誌やブランドカタログを手がけてきました。今は海外移住を考えているという高橋さんに、函館の思い出と今後の展望を語っていただきました。

 
取材・文章:阿部 光平、撮影:馬場 雄介、イラスト:阿部 麻美 公開日:2015年6月16日 

 
 

 
 
 
 
 
 

エキストラ募集で掴んだ上京のチャンス
 

━━ファッションスクールを卒業した後は、そのままイタリアで働くつもりだったのでしょうか?
高橋:そういうつもりはなかったですね。日本に帰ろうと思ってました。向こうが就職難だったのと、ちょっとホームシックだったので。卒業してから、一度実家に帰り、勉強してきたことを活かすために、誰かのアシスタントになろうと思っていました。

━━函館でスタイリストの仕事を探していたということですか?
高橋:さすがに函館には、私が求めるような仕事はなかったので、東京の仕事を探してました。親には「仕事がちゃんと見つかってから上京しなさい」と言われていたので、履歴書に「すぐに上京できます」って書きながら就活してました。でも、結局東京に住んでないから、ぜんぜん採用してもらえなくて、どうしたもんかなって感じでしたね。結局、そのまま半年くらいは函館にいました。

━━確かに、履歴書だけでやる気を伝えるのは難しいですもんね。仕事としての実績があるわけでもないし。
高橋:そうですね。それで、どうしようかなと思ってた頃に、函館で『海炭市叙景』という映画の撮影があったんです。そこでエキストラの募集を見つけて、「仕事に繋がる誰かと知り合えるんじゃないか」と思って応募しました。
オーディションには、監督とかプロデューサーの方がいたので、「本当はエキストラじゃなく、スタッフをしたいんです」って話したんです。その映画は、低予算の作品で、アシスタントを連れて来れないという事情があったらしく、運良く手伝わせてもらえることになりました。

━━素晴らしい行動力ですね。自らきっかけを掴みに行ったと。初めて関わる映画の現場はいかがでした?
高橋:すっごい大変でしたね。朝早いし、近くに俳優さんがいるとドギマギしちゃうし(笑)。でも、それが終わったあと、スタイリストの方から、東京に出る気があるのならアシスタントやらないかって声をかけてもらったんです。それですぐ上京しました。

━━思惑通りといった感じですね。東京にやってきてからは、スタイリストのアシスタントとして、どのような生活をしていましたか?
高橋:私が上京したときには、別の映画の仕事が決まっていて、すぐに働き始めたんですけど、とにかく寝れないくらい忙しい日々でした。しかも、他のアシスタントの人と反りが合わなくて…。結局、3ヶ月くらいで辞めちゃったんですよね。
映画のスタイリストというのは、ファッションというよりも衣装なので、ミラノで勉強してきたことが活かせる職場でもありませんでした。その人のところにいたら、ずっと映画衣装の仕事ばっかりになっちゃうなと思った時に、やっぱりファッションに携わりたいなという気持ちが強くなってきて。

━━では、そこからまた仕事探しが始まったわけですね。
高橋:そうですね。でも、すぐに次の仕事が見つかりました。今はもうないんですけど、VOGUE(※2)という雑誌のメンズ版で『VOGUE HOMMES JAPAN』というのがあって。そこでファッションエディターをしていた方が雇ってくれました。仕事内容は雑誌の編集アシスタントですね。クレジットやショップリストを作ったり、誌面を校正したりというような。
ここでの仕事は、イタリアで勉強してきたことに近かったので、やりがいがありました。海外のファッション誌の撮影とか、ユニクロや資生堂のCMのディレクションなど、色々な仕事に携われたのは良い経験になりましたね。

━━CMにおけるスタイリストの関わり方というのは、どういった感じなのでしょう?
高橋:衣装やヘアメイクさんを手配して、撮影に臨むというのが主ですね。CMだと衣装のブランド名とかのクレジットを出せないので、衣装はレンタルではなく購入していました。いろんな店で、衣装をリサーチするのも仕事でしたね。結局、そこでは1年半ほど働いていました。

━━ファッション、スタイリスト、雑誌作りと、仕事内容的には高橋さんが理想とする職場のようにも見えますが、なぜ辞めることにしたのでしょうか?
高橋:給料がでなかったので。スタイリストのアシスタントって、けっこう給料が出ないところが多いんですよね。仕事というよりも、経験を得る場所というか。なので、仕事内容的には楽しかったんですけど、忙しくてあまりプライベートもなかったし、親の仕送りで生活するのも申し訳なかったので辞めることにしました。

━━好きな学校にも行かせてもらったのに、いつまでも親に面倒を見てもらうわけにはいかないと。で、また就職活動ですか?
高橋:そうですね。まぁ、慣れたもんです(笑)。次に入ったのが、今いる雑誌の編集プロダクションです。
 

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