函館で直面した待機児童問題と、歯科医院の3代目として思い描く今後の暮らし


━━額賀さんが函館に戻ってきたのって、いつだったんですか?
額賀:2014年の3月です。

━━帰るのを決めたのは、どのようなタイミングだったのでしょうか?
額賀:もう、タイムリミットがきたって感じですね(笑)。いつかは帰るつもりだったんですけど、具体的なタイミングまでは決めてなかったんですよ。だけど、親からは「いつ帰ってくるんだ?」って言われてて(笑)。

━━それはそうですよね。家を継ぐってことで、歯科大に行ってるわけですからね(笑)。
額賀:それでも、ラグビーをやりたいから帰るのを先延ばしにしてたんですけど、3年前に親が医院を改築したんですよ。そういうプレッシャーもありました(笑)。

━━なるほど! 医院もきれいになって、最新機器も揃い、あとはもう息子を待つばかりの状態だと(笑)。そうなったらもう先延ばしにはできませんよね(笑)。
額賀:はい(笑)。

━━実際、15、6年ぶりに戻ってきた函館の印象はいかがですか?
額賀:毎年1回くらいは帰省していたので、特に大きな変化は感じないですけど、いざ住んでみると、好きな街とはいえ、少し物足りなさもありますね。

━━その物足りなさっていうのは、何と比較してですか? 〝昔〟と比べてなのか、〝関東〟と比べてなのか。
額賀:両方じゃないですかね。子どもの頃って部活に専念していたので、遊びとかに多くを求めないじゃないですか。だけど今は、結婚して、子どもも生まれて、生活のしかたが変わったし、別の街での暮らしも知ったので、函館に物足りなさを感じるのは事実です。
あとは、友達に関しても、ラ・サールって市外から来てる人が多かったので、高校の知り合いで函館に残ってる人もほとんどいないんですよね。小中の友達も、それぞれ家庭を持ったりすると、近くにいてもなかなか会えなかったりしますし。向こうにいた時は、仕事終わりに友達と飲みに行ったりとかもあったけど、帰って来てからは、そういうのもないですね。
ただまぁ、落ち着きを求めて帰って来たという側面もあるので、物足りなさはあっても、ストレスとかはありません。



━━先ほど、結婚のお話がありましたが、奥さんはどこ出身の方なんですか?
額賀:茨城です。3年前に結婚して、一緒に帰ってきた感じですね。

━━奥さんを知らない土地に連れてくることに対して、不安や苦労はありましたか?
額賀:将来的に函館に帰るということは、付き合い始める頃から話してたんですけど、いざ生活の基盤を移すとなると、僕の方が不安でしたね。出身は茨城なんですけど、大学も東京だったし、「都会の子が、こんな田舎にきて大丈夫なんだろうか?」っていう不安はすごくありました。

━━実際に来てみてから、奥さんから不満の声などは?
額賀:僕には何も言ってないですね(笑)。本当はあるのかもしれないけど。唯一あるとすれば、寒いってことくらいですかね。暑いのが好きみたいで(笑)。

━━お子さんもいらっしゃるとのことですが、子育てをする環境としての函館はいかがですか?
額賀:こっちに戻ってきてから生まれたので、他との比較はできないんですけど、子どもを連れて遊びに行ける場所は少ないですね。月に一度は、仕事で東京に行くんですけど、子連れで遊んでいる家族とかを見ると羨ましいなと思います。
その反面、子どもが人混みの中で歩いているのとかを見ると、かわいそうだなとも思いますよね。結局は、どちらにしろ無いものねだりになっちゃうんですけど。

━━東京だと待機児童などが問題視されていますが、そういう面での苦労とは無縁ですか?
額賀:函館では待機児童ゼロだっていう話を聞いてたんですけど、実際にはそんなこともないと思います。
うちの子は、今年の4月から保育園に入ったんですけど、去年は入れなくて、結局、一時保育ってかたちで週一回しか預けられなかったんですよ。年度の頭からではなかったんですけど、入れたいけど入れないって時点で、それは待機児童なんじゃないかなと。

━━どういう理由で入れなかったんですか? 定員オーバーってことですか?
額賀:定員ってことですね。僕の同級生でも、ゼロ歳児保育のクラスで預けられなかったという人がいました。

━━実際、子どもは多いんですか?
額賀:そんなには多くはないと思いますよ。どちらかというと、保育所が少ないんだと思います。この辺にも、大谷幼稚園ってのがあったんですけど、統合して、移転しちゃったみたいで。

━━少ない保育所に子どもが集中しちゃうから、結果的に定員オーバーになると。
額賀:たぶん、そういうことなんじゃないですかね。それでも東京よりかはマシだと思いますけど。

━━では最後に、今後、函館で暮らしていく上での展望などを聞かせてください。
額賀:展望かぁー。これも〝歯医者あるある〟なんですけど、歯医者って「3代目で潰れる」とかって言われるんですよ(笑)。だから、そうはならないように、しっかりした診療ができる体系を作っていきたいですね。地域密着型っていったら変ですけど、都会にある歯科医院みたいに、あまり派手にやりたいとは思ってません。地域医療に貢献できればいいなと。
あとは、結局、去年の秋から社会人チームでラグビーも再開しちゃったので、それも続けていきたいですね(笑)。

━━ちなみにお子さんって、男の子ですか? 女の子ですか?
額賀:男の子です。

━━ラグビーをやらせたいって気持ちとかは?
額賀:それは、ないです(笑)。僕、すっごい怪我してきたんで。もし、やりたいって言ったらやらせますけど、やっぱラグビーってやる気がない人がやるスポーツではないですからね。無理やりやらせるっていうことはないと思います。

━━4代目として額賀歯科医院を継いでほしいという気持ちは?
額賀:それもありません。もちろん、やりたいって言うなら反対はしませんが、僕からやりなさいとは言わないですね。うちの父親も、そういう教育方針だったので、子どもが進む道は自由に決めさせたいなと思っています。
でも、できれば、将来は函館に戻ってきてほしいとは思いますね。僕は、もう函館を離れる気はないんで。

━━それはつまり、一度は函館を出てみてほしいということですか?
額賀:一度は出るべきだと思います、絶対に。ずーっと函館にいるよりも、他の世界も見た方がいいと思いますね。いろんなモノ見た上で戻ってくるのが、一番いいんじゃないですかね。父親としては、今はそう思っています。





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西部地区の街並み

「この辺りの街並みが好きで戻ってきたので。特に、十字街の電停から水道局にかけての景色とかが好きですね。お酒を飲んで帰ってきて、少し手前でタクシー止めてもらって、歩いて帰るのが楽しかったりします」

根崎のグラウンド

「小さい頃からホームグラウンドだったので、ここでラグビーをするのは未だに心地いいですね。芝もきれいだし。今所属している上磯ラガーっていう社会人チームでも、ここで試合をやったりしています」

奥芝商店のスープカレー

「もともとカレーは好きだったんですけど、帰ってきてからはスープカレーにハマってます。よく行くのは奥芝ってお店なんですけど、角煮が入ったカレーが美味しいんですよ」