■景気に左右される? フリーランスという働き方も? 歯科医の意外な実態
━━最初に現在のお仕事について教えてください。こちらの歯科医院は、額賀さんのお父さんが院長を務めていらっしゃるとのことですが、額賀さんで何代目ということになるのでしょうか?
額賀:開業したのは祖父なんです。なので、僕で3代目ということになりますね。
━━開業されたのは、何年前くらいのことなんですか?
額賀:たしか、昭和19年とかだったかな。当時は、ここではなくて、向かいの駐車場のところにあったんですけど、父の代になってからこの場所に移動してきたんです。
━━そもそも、お祖父さんは、この辺りの方だったんですか?
額賀:祖父は茨城の出身なんですよ。祖母の方が函館の人で。どうして西部地区で歯科医院を開業したのかは、僕も知らないんですけど(笑)。
━━そうなんですね(笑)。お祖父さんが開業されて、お父さんが家を継いでとなると、やはり額賀さんも小さい頃から歯科医になろうと考えていたんですか?
額賀:それは、まったくなかったです(笑)。
━━なかったんですか!? 親からの期待や、プレッシャーみたいなものは?
額賀:なかったですねー(笑)。小さい頃からラグビーをやってたんで、ラグビーで進学しようと思ってたんです。一応、慶応大学からの推薦ももらったんですけど、学校の関係でダメになっちゃって…。だったら、実家のこともあるし歯医者を目指そうと思ったんです。親は、「やらないならやらなくていい」って感じだったんですけど。
━━ちなみに、額賀さんってご兄弟はいらっしゃるんですか?
額賀:兄と弟がいます。でも、兄は歯科大には行ってたなかったので、その道に進むつもりはないって感じで、弟にも一応聞いたんですけど、「歯科には絶対行かない」って話だったので、僕はそっちに進もうかなと思ったんです。
━━男3人兄弟で誰が跡取りになるかって揉めることもないし、自分で開業するというリスクもないということで。
額賀:そうですね。ややこしい話もないような状況だったので。あとは、僕、函館が好きだったんですよ。何をするにせよ、函館には戻ってきたいとは思ってたんで、歯医者を継ぐ道を選びました。
━━実際に、歯科医として独り立ちして、函館で働いてみた感想はいかがですか?
額賀:歯科医の家では割とよくある話なんですけど、父親と一緒に働くと、ケンカ別れするってパターンがけっこう多いんですよ。だけど、うちは一度もケンカしたことはないですね。自分で言うのもおかしな話なんですけど、なかなか立派な親父なんで(笑)。なので、仕事も楽しくやれてますね。
━━そういう〝歯医者さんあるある〟みたいなのってあるんですね(笑)。歯医者に来る人の症状というのは、函館でも東京でも一緒でしょうから、仕事内容に変化はないと思いますが、忙しさという部分で違いは感じられますか?
額賀:東京の歯科医院は、夜9時とか10時まで診療するのが普通だったりしますけど、うちは夜7時までなので、そういう意味で時間のゆとりは感じますね。
だけど、患者さんにも地域性というのがあるんですよ。例えば、東京とかだと虫歯を削るという治療が多かったりするんですけど、函館だと入れ歯の患者さんが多かったりってのがあります。
━━なるほど、なるほど。地域によって年齢層が異なるから、業務内容にも違いが出るんですね。
額賀:そうなんです。だから、関東にいる時には、東京都中野区と、千葉県の九十九里浜という地域性の異なる医院を掛け持つかたちで働いていました。実家の歯科医院を継ぐにあたって、いろんな地域で、いろんな歯科医の、いろんなやり方を見たいと思ったので。
━━掛け持ちって、要するにフリーランスみたいなかたちで働くってことですか?
額賀:そうです、そうです。フリーランスの歯医者って、実はいっぱいいるんですよ。
━━そうなんですか!? 歯医者にもフリーランスという働き方があるとは! そもそも、歯科医って景気に左右される仕事じゃないから、フリーランスでも比較的安定してるんですかね?
額賀:いや、景気には思いっきり左右されますよ。景気が悪い時は患者さんも少なくなります。
あとは、天候の影響も大きいですね。特に函館みたいな地域だと、冬にはグッと患者さんが減りますね。出歩く人自体が減るので。
━━確かに、足元が悪い中で出かけるのは億劫ですもんね。お年寄りだったりすると、特に。歯医者さんの仕事が景気に左右されるというお話は意外でした。
額賀:そうなんですよね。アメリカとか韓国だと状況は違うんですけどね。医者よりも歯医者の方が社会的地位が高かったりしますし。今はわからないですけど、ちょっと前まで韓国では、歯医者が〝なりたい職業No.1〟だったりもしたんですよ。