■消えかけた情熱を再び焚きつけた有斗高校ラグビー部のOB
━━「もう、役者辞めようかな」と思うに至った経緯は、どのようなものだったんですか?
町屋:去年の5月に初めて主演舞台をやらせていただいて、けっこう仕事の調子がよかったんですよ。映画の撮影が入ったりもして。それで、主演舞台が終わった時に、「今後の方針で打ち合わせしたいことがあるから」って事務所の統括マネージャーから呼ばれて、「次の仕事の話かな?」みたいなウキウキした気持ちで行ったんです。そしたら、一気にどん底に落とされて…。
━━どんな話をされたんですか?
町屋:「舞台、お疲れ様」って話のあとに、「話になんないね」っていわれて。僕的には「えっ?」って感じだったんですよ、手応えもあったし。でも、事務所からは「もう、素人だよ。声も出てないし。趣味でやってんの?」「もう32だよね。お前の将来保証できないからさ。一般人に戻るなら今だよ」っていうようなことをいわれたんですよ。こっちとしては思いもよらぬ展開だったんですけど、それを機にいろいろ考えちゃって。「確かに事務所は何も保証してくれないし、全然食えてないのに、今後もこういう生活していくんだろうか」とか。悔しい反面、「確かにな」って思う部分もあったんです。年齢的なことを考えたときに「誰になんていわれようとも、俺はやってやるよ」って言い返せない自分もいて。だから、もう辞めようかなって。
━━では、今はもう俳優業を引退しようという方向に?
町屋:いや、そう思ってたときに、ちょっとご縁があって。
僕、有斗のラグビー部だったんですけど、去年、有斗高校のラグビー部の創立50周年パーティがあったんですよ。僕は行けなかったんですけど、兄貴も有斗のラグビー部だったので出席していて、そこで有斗出身で今は映画プロデューサーという方と会ったらしいんですよね。しかも、いろいろ話を聞いているうちに、僕が出演させていただいた映画が、その方がプロデュースした作品だったってことが発覚して。
━━えー! すごい偶然!
町屋:そうなんですよ。現場ではお会いしてなかったんですけど、台本を見返してみたら、確かにその方の名前があって。「こんな偶然あんのか?」って思いました(笑)。それで、試写会のときに、初めてお会いして、「また何かあればよろしくね!」っていってもらったんです。それで、また火がついたんですよね。これは「まだ辞めるな」ってことなのかなと思って。
━━なるほど。そういうこともあって、普段の仕事や生活に対する意識も変わったということですね。
町屋:はい。バイトでお店を任されるようになったのも、その頃だったので。今は課題を与えてくれる人に感謝しつつ、役者として成長していけるように努力しています。
━━「役者として成長」というお話がありましたが、官僚だったり、災害レスキュー隊員だったりと、演じる役柄によって必要な知識というのは変わるじゃないですか。いくら台本があるとはいえ、基本的なことがわかっていないと演技は難しいと思うんですけど、そのあたりはどのようにクリアしていくのでしょう?
町屋:災害レスキューのときは、撮影が始まる前に、東京消防庁で勉強会を行って、現場を見させてもらって、訓練しました。隊員の方がみんなムキムキだったので、自分も体を鍛えるようにはしましたね。
知識的な部分でいえば、事前に勉強して、基本的な情報は入れておきます。セリフは台本に書いてあるけど、言い回しとかは現場で見た感じと全然違うので、その辺りは現場の様子をもとにリアリティを追求するようにしました。
━━やはり役作りというのは、現場を見て、勉強するに限るんですね。ただ、官僚とかになると、実際に仕事ぶりを見せてもらうというのは難しいですよね?
町屋:そうですね。だから、そういう場合は本やネットで調べたり、他の作品とかを見て、立ち振る舞いとかを研究するようにしています。
サラリーマンとかも実際にはやったことがないんで、新橋に行って、いろいろ観察してみたりとかしてますね。実際の人達を見るのが一番の近道なんです。わかりやすいというか。
反対に、自分が経験したことのある仕事とかを演じるのは、やりやすかったりします。一度、ウエイターの役やったんですけど、ずっとそういう仕事をしてたので、自然に演技することができました。見てる人が、「いやいや、そんなことしないでしょ!」みたいに感じちゃうことは避けたいので、なるべく知識だけではなく、観察をもとに役作りをするようには心がけています。