■不貞腐れていた青春を救った〝バカな友達〟
━━森中を卒業後は、どういう進路に?
高橋:僕、小学2年生の時から騎手になりたかったんですよ。競馬の。
━━それは、どんなきっかけだったんですか?
高橋:「お前も甲子園に出たら嬉しいな」って言ってたじいちゃんが、〝ばんえい〟の馬を飼ってて、馬主でもあったんですよ。
━━〝ばんえい競馬〟ってやつですか?
高橋:そうですそうです。そこで、小さい頃から馬に触らせてもらってて、興味を持つようになったんですよ。それで、将来は馬に携わる仕事に就きたいなと思って、「だったら、騎手だろ!」と。やっぱり騎手が一番かっこいいなと思ってたので。だから、中学を出たら騎手になるための学校に行こうと思ってたんですよ。
━━「思ってた」ということは?
高橋:実際には行けなかったんですよね。体格の問題で。
━━騎手って、背が高い人はなれないんでしたっけ?
高橋:そうなんですよ。具体的には身長、体重、視力、親の身長に関する条件があるんですけど。
━━親の身長まで!? その後、大きくなる可能性があるかないかっていう判断ですか?
高橋:はい。そこも判断基準になるんですよね。
━━騎手の学校っていうのは、基本的に16歳で入学するものなんでしょうか?
高橋:そうですね。人によっては試験に落ちて、翌年入学するとか、1年間牧場で働いて、もう一回受験するって人もいますけど、ほとんどが16歳で入ります。
━━学校は、全国に何箇所かあるんですか?
高橋:中央競馬が運営しているのは、千葉県にある学校だけですね。
━━なるほど。だけど、そこに入学するには体が大きすぎたと。
高橋:そうなんですよ。だけど諦めきれなかったので、色々調べてたら、オーストラリアだと騎手になるための条件が日本ほど厳しくないってことがわかったんです。それで、オーストラリアに行こうと思ってたんですけど、調教師の方と話す機会があった時に「君の体格でジョッキーになるのは無理だから、馬に携わる仕事をするなら、高校を出て、調教師になるために牧場へ行ったほうがいいよ」って言われたんですよ。それで、結局は函館の稜北高校に行くことにしました。
まー、身長はそこで止まっちゃったんですけどね(笑)。
━━騎手から調教師へと目指すゴールは変わりましたけど、高校を出たら牧場に行こうという意思は固まってるわけじゃないですか。なんならすぐにでも行きたいって気持ちだったと思うんですけど、そういうモチベーションで過ごす高校生活はいかがでしたか?
高橋:やっぱり「つまんないなー」っていう気持ちでしたね。ちょっと、不貞腐れているような。
━━「こんなところで勉強してるより、早く馬の仕事がしたいなー」って気持ちですか?
高橋:それもあったんですけど、「あ~、騎手になれないんだぁ…」っていう気持ちが強くて。牧場に行くなら乗馬をやった方がいいとも言われてたんですけど、何となくサッカーとかしてましたね。それも結局は1年くらいで辞めちゃいましたけど。
━━喪失感が強かったんですね。
高橋:そうですね。だけど、それくらいの時に、また砂原の友達と遊ぶようになって、一緒に『Bay City’s street』っていうライブハウスに遊びに行くようになったんですよ。そこで、学校も年齢も違う友達がたくさんできたんですけど、その連中と遊ぶのがとにかく楽しくて。そうやって遊んでいるうちに、不貞腐れてた感じはなくなっていったんですよね。
━━気の合う友達ができて、毎日の生活に楽しみを見出せるようになったと。
高橋:なんかもう、何をしてても面白かったんですよ。そいつらを見てるだけでも、すげー楽しくて。僕は笑ってるだけなんですけどね。あまりのバカさ加減に。「こんな面白い奴らが、こんなにいるんだ!」みたいな感じでした。
━━中でも特に印象的だったエピソードはありますか?
高橋:なんだろうな、いっぱいあるんですけど。一番最初、キングオブキングスっていう食べ放題の店に行ったんですよ。最初は普通に焼肉とか食べてたんですけど、そのうち焼いた肉を誰かの靴に入れる奴とか出てきて。そしたら、履いた奴も履いた奴で、焼肉入ってるのに気づいて、そのまま食べちゃったりして。本当に下らないことなんですけど、「面白いなー!」って思って笑ってました。
━━そういう馬鹿なことやる面白さってありますよねー(笑)。
高橋:そいつらとは、その頃から今に至るまでほぼずっと一緒にいますね。
━━今でもそういうバカなことをやったり?
高橋:つい先日も、自分の店で仲間が飲んでて。大体みんな酔っ払うと脱ぐんですけど、最終的には裸になって店のカウンターの上で踊ったりとか、ケツ毛にジッポのオイル塗って火つけて遊んだりとかしてましたね。さすがに店がクローズの時ですけど(笑)。