葭葉 抄子さん(32)
職業:ウェディングコーディネーター
出身地:函館(大沼)
現住所:東京
函館(大沼)→東京→オーストラリア→東京
ビーチや公園、キャンプ場などを舞台に、自由で個性的な結婚式を数多く手がけている『Happy Outdoor Wedding』で、コーディネーターとして活躍する葭葉抄子さん。自身のウエディングを故郷・大沼で挙げ、改めて地元の人や環境の素晴らしさに気付かされたといいます。
東京、オーストラリアと拠点を移すごとに大沼の魅力を再認識し、「故郷を盛り上げたい」という気持ちで地元に戻るものの、その度に自分がいかに勘違いをしていたかを痛感させられてきたという葭葉さんに、夢がなかったことに対する焦りや、大沼の人達のハイレベルな暮らしぶり、「東京でも田舎を諦めない」というスタンスの都会生活などについて伺いました。
取材・文章:阿部 光平、撮影:馬場 雄介、イラスト:阿部 麻美 公開日:2016年9月17日
地域の人との繋がりで作る
『ハッピーアウトドアウエディング』
━━葭葉さんは、ウエディングコーディネイターとして活躍されているとのことですが、所属している『Happy Outdoor Wedding』(以下H.O.W)について教えて下さい。どんなコンセプトで、どういった活動をされているのでしょう?
葭葉:コンセプトとしては「未来の新郎新婦が、等身大で、自分達らしく、楽しんで理想のウエディングを実現する」ということを掲げていて、そのお手伝いをしています。
ウエディングって、まず式場選びから始まって、そこに用意されているプランの中から好みのものを選ぶというパターンが多いじゃないですか。そうじゃなくて、「どんなウエディングをしたいのか」という根本的なところからスタートして、場所を決め、食事を決め、内容を決めるといったかたちで、時間や人数、演出の規制が少ない自由なウエディング作りを提案しています。
みんなと盛大にキャンプファイヤーがしたいとか、夜は星空を眺めたいとか、そのままキャンプ場で1泊したいとか、新郎新婦が考えるウエディングを企画・提案・サポートしている会社です。
━━僕も参列者としてアウトドアのウエディングに出席したことがあるんですけど、形式張ってなくて、新郎新婦の個性が全面に出ているという印象がありますよね。
葭葉:そうですね。やはり規制が少ない分、自分達らしい雰囲気が出せるんだろうなと思います。私自身も、大沼でアウトドアウエディングを挙げたんですよ!
━━おぉ、大沼で! 昔から、アウトドアで式を挙げたいと思ってたんですか?
葭葉:最初は、結婚式はしなくてもいいなと思ってたんですよ。ちょっと小っ恥ずかしいというか。キャンドルサービスなどをやってる自分を想像すると笑え てきて、これはやらなくてもいいんじゃないかなーと(笑)。
だけど、前にブライダルのカメラマンをしてる友人とルームシェアをしていたことがあって、その子から見せてもらったフリーペーパーに H.O.W の紹介記事が載ってたんです。それを見たときに、「あ、これならやりたいかも!」って思って、一気に大沼の風景が浮かんだんですよね。
当時の H.O.W は、今のようなサポートサービスは行っていなくて、アウトドアウエディングの事例を紹介するメディアだったんですけど、すぐに興味が湧いて、直接メールを送ったんです。「めっちゃ興味あります!」って。いかに自然が好きかをアピールするために、大沼でハンモックに揺られてる写真を添付したりして(笑)。それで、ブライダルイベントのボランティアスタッフとして参加した のが最初のきっかけでした。そのイベントがすごく面白かったので、そこから函館と大沼にいる人達に協力をお願いして、自分の式を進めたんです。
━━実際に、ご自身でアウトドアウエディングをやってみた感想はいかがでしたか?
葭葉:すべてが手探りだったので、今思うと「ここはこうした方がよかったな」とか、いろいろあるんですけど、もう本当に楽しかったですね。準備の段階から。
プロデュースをお願いした函館のサクセンカイギ社さんのアイディアで、使われなくなった遊覧船を湖上の星屑バーとして活用したり、昔から可愛がってもらってたカヌーハウスのおじさん達がカヌーの船頭をしてくれたり、地元の人、仲間が少しずつ役割を担当してくれて。「どこどこの娘が結婚!」みたいなポスターを作って、町中に貼られていたのには驚きましたね(笑)。本当にいろんな人に協力してもらって、今でもみんなには頭が上がらないです。
━━町中にポスターってすごいですね! 町内会のお祭りのお知らせみたいな(笑)。参加したお客さんの反応はどうでしたか?
葭葉:それが、台風で雨だったんですよ(笑)。本当は雨だったらセミナーハウスという施設の室内で開催する予定だったんですけど、直前までは晴れていたので、外での準備を進めてたんですよね。だけど、本番直前になって雨が降ってきて、「わー。どうしよう … 」って。
そしたら、地元のおっちゃん達が、その辺に落ちてるブルーシートをロープワークで「はい、そっち持って!」という 感じで、ササッと屋根を作ってくれたんですよ! そのときに、自然の中で生きている人達のたくましさみたいなものを感じて、「大沼の人達ってすごい!」って実感しました。
それで、やっぱり雨なので、屋根のあるところに人が集まるんですけど、そこで都会から来た女の子と地元のおっちゃん達が肩を寄せながら、「どっから来たの?」って話してて。そうやって距離感が縮まったのが、楽しかったって言ってくれる人も多かったので、やってよかったなと思いましたね。
━━決められた席についてご飯を食べてるだけだと、そういった交流は生まれにくいですもんね。まさに雨の恩恵というか。
葭葉:そうですね。翌日はカラッと晴れて、みんな北海道観光をしていったんですけど、そのまま函館まで乗っけてってくれて、観光案内してくれたおっちゃんがいたという 話を後から聞いて嬉しくなりました。
私が大沼で式を挙げたのは、とにかく地元が大好きで、「一回来てみれば、その良さがわかるから来て欲しい」という 思いがあったんです。だから、みんな楽しんでもらえてたみたいでよかったなぁと思ってます。
━━アウトドアウエディングってどうやって作り上げていくのか想像がつかないんですけど、H.O.Wでは、どんなサポートを行っているのでしょうか?
葭葉:相談会という窓口を設けていて、はじめは「どういうところでできるのか場所を知りたい」とか、「こんなことをやりたいんだけど、どうしたらいいんですか?」って相談会に来てもらいます。それだけ聞いて自分達で開催できちゃう人もいるんですけど、「パーティの部分は自分達でできるけど、セレモニーの部分はカチッとやりたいので、そこだけ手伝って欲しい」という 部分サポートや、始めから終わりまでを手がけるフルサポートなど、いろんなお手伝いをしています。
基本的には、「どんなウエディングをしたいですか?」という ヒアリングから始まって、計画を作って、当日の運営までという かたちですね。プログラムの作り方や、スケジュールの相談、一緒にアイテム作りをしたりなど、細かい部分もサポートしています。あとは、当日ですね。さすがに新郎新婦はプロデューサーに回れないので、そこの部分で代わってまとめたり、進行を担当したり、荷物の運搬からハイエースの運転まで、結局何でもやってますね(笑)。
━━まさにフルサポート(笑)。これって全国各地で開催してるじゃないですか。普通の式場って、開催のノウハウがあって、どういう人が来ても対応できるようになってるんだと思うんですけど、大沼でやる場合もあれば東京でってこともあると、例えば花屋さんはどうするとか、食事をどうするとかってのは、その都度組み立てなきゃいけないわけですよね?
葭葉:その辺は、新郎新婦のご友人が担当する場合もあれば、ツテだったり、 SNS での呼びかけで手配してますね。
━━じゃあ、ウエディングごとにチームができて、終わって解散みたいな。
葭葉:そうですね。毎回、火は使えるか、音は出せるか、屋根はあるかという現場 確認から始まるので、なかなか 大変なんですけど(笑)。一応、同じ会場だとある程度、想定ができるので、そういうところは連携フィールドという かたちで、紹介させてもらっています。その中から選ばれる方もいれば、「自分の実家のぶどう畑でやりたいです」など 、本当に様々なパターンがありますね。
━━まさに世界でひとつだけのウエディングを作っていくってことなんですね。ホームページには、「2人のウエディングを通じて地元との繋がりを生み出す」といった理念が掲げられていますが、具体的にはどんなことを実施されているのでしょうか?
葭葉:全体的にそうなんですけど、結婚式って平均 100 人規模で、地方だと一泊とかになるので、交通面のアクセスから、宿泊、お料理、ヘアメイク、カメラマン。あとはその土地土地で、大沼だとカヌーの演出などをする場合には、地元の方と提携したり、その土地の文化や特徴を活かすことを意識して進めています。
━━細かい部分も積極的に地元の方にお願いすると。
葭葉:そうですね。どうしても見つからない場合は、東京から呼ぶこともあるんですけど。あと、新郎新婦が東京のアーティストさんを呼びたいという場合もあります。だけど、それはそれで面白くて。地域に違う色が入ってくるというか。
前に新島でアウトドアウエディングを開催したんですけど、その時は東京の料理家さんを呼んで、地元のおばちゃん達の料理チームも一緒になって、新島の郷土料理と、地元の食材を使って東京の人が作った創作料理を出したんです。
あとはフラワーアーティストの方がいて、新婦のお父さんと一緒に山で花を収穫して、それで装飾するとか。この花はお祭りの時に魔除けの意味合いで玄関に飾るとか、そういう土地の文化を準備過程で聞けるのも楽しみのひとつです。
葭葉:コンセプトとしては「未来の新郎新婦が、等身大で、自分達らしく、楽しんで理想のウエディングを実現する」ということを掲げていて、そのお手伝いをしています。
ウエディングって、まず式場選びから始まって、そこに用意されているプランの中から好みのものを選ぶというパターンが多いじゃないですか。そうじゃなくて、「どんなウエディングをしたいのか」という根本的なところからスタートして、場所を決め、食事を決め、内容を決めるといったかたちで、時間や人数、演出の規制が少ない自由なウエディング作りを提案しています。
みんなと盛大にキャンプファイヤーがしたいとか、夜は星空を眺めたいとか、そのままキャンプ場で1泊したいとか、新郎新婦が考えるウエディングを企画・提案・サポートしている会社です。
━━僕も参列者としてアウトドアのウエディングに出席したことがあるんですけど、形式張ってなくて、新郎新婦の個性が全面に出ているという印象がありますよね。
葭葉:そうですね。やはり規制が少ない分、自分達らしい雰囲気が出せるんだろうなと思います。私自身も、大沼でアウトドアウエディングを挙げたんですよ!
━━おぉ、大沼で! 昔から、アウトドアで式を挙げたいと思ってたんですか?
葭葉:最初は、結婚式はしなくてもいいなと思ってたんですよ。ちょっと小っ恥ずかしいというか。キャンドルサービスなどをやってる自分を想像すると笑え てきて、これはやらなくてもいいんじゃないかなーと(笑)。
だけど、前にブライダルのカメラマンをしてる友人とルームシェアをしていたことがあって、その子から見せてもらったフリーペーパーに H.O.W の紹介記事が載ってたんです。それを見たときに、「あ、これならやりたいかも!」って思って、一気に大沼の風景が浮かんだんですよね。
当時の H.O.W は、今のようなサポートサービスは行っていなくて、アウトドアウエディングの事例を紹介するメディアだったんですけど、すぐに興味が湧いて、直接メールを送ったんです。「めっちゃ興味あります!」って。いかに自然が好きかをアピールするために、大沼でハンモックに揺られてる写真を添付したりして(笑)。それで、ブライダルイベントのボランティアスタッフとして参加した のが最初のきっかけでした。そのイベントがすごく面白かったので、そこから函館と大沼にいる人達に協力をお願いして、自分の式を進めたんです。
━━実際に、ご自身でアウトドアウエディングをやってみた感想はいかがでしたか?
葭葉:すべてが手探りだったので、今思うと「ここはこうした方がよかったな」とか、いろいろあるんですけど、もう本当に楽しかったですね。準備の段階から。
プロデュースをお願いした函館のサクセンカイギ社さんのアイディアで、使われなくなった遊覧船を湖上の星屑バーとして活用したり、昔から可愛がってもらってたカヌーハウスのおじさん達がカヌーの船頭をしてくれたり、地元の人、仲間が少しずつ役割を担当してくれて。「どこどこの娘が結婚!」みたいなポスターを作って、町中に貼られていたのには驚きましたね(笑)。本当にいろんな人に協力してもらって、今でもみんなには頭が上がらないです。
━━町中にポスターってすごいですね! 町内会のお祭りのお知らせみたいな(笑)。参加したお客さんの反応はどうでしたか?
葭葉:それが、台風で雨だったんですよ(笑)。本当は雨だったらセミナーハウスという施設の室内で開催する予定だったんですけど、直前までは晴れていたので、外での準備を進めてたんですよね。だけど、本番直前になって雨が降ってきて、「わー。どうしよう … 」って。
そしたら、地元のおっちゃん達が、その辺に落ちてるブルーシートをロープワークで「はい、そっち持って!」という 感じで、ササッと屋根を作ってくれたんですよ! そのときに、自然の中で生きている人達のたくましさみたいなものを感じて、「大沼の人達ってすごい!」って実感しました。
それで、やっぱり雨なので、屋根のあるところに人が集まるんですけど、そこで都会から来た女の子と地元のおっちゃん達が肩を寄せながら、「どっから来たの?」って話してて。そうやって距離感が縮まったのが、楽しかったって言ってくれる人も多かったので、やってよかったなと思いましたね。
━━決められた席についてご飯を食べてるだけだと、そういった交流は生まれにくいですもんね。まさに雨の恩恵というか。
葭葉:そうですね。翌日はカラッと晴れて、みんな北海道観光をしていったんですけど、そのまま函館まで乗っけてってくれて、観光案内してくれたおっちゃんがいたという 話を後から聞いて嬉しくなりました。
私が大沼で式を挙げたのは、とにかく地元が大好きで、「一回来てみれば、その良さがわかるから来て欲しい」という 思いがあったんです。だから、みんな楽しんでもらえてたみたいでよかったなぁと思ってます。
━━アウトドアウエディングってどうやって作り上げていくのか想像がつかないんですけど、H.O.Wでは、どんなサポートを行っているのでしょうか?
葭葉:相談会という窓口を設けていて、はじめは「どういうところでできるのか場所を知りたい」とか、「こんなことをやりたいんだけど、どうしたらいいんですか?」って相談会に来てもらいます。それだけ聞いて自分達で開催できちゃう人もいるんですけど、「パーティの部分は自分達でできるけど、セレモニーの部分はカチッとやりたいので、そこだけ手伝って欲しい」という 部分サポートや、始めから終わりまでを手がけるフルサポートなど、いろんなお手伝いをしています。
基本的には、「どんなウエディングをしたいですか?」という ヒアリングから始まって、計画を作って、当日の運営までという かたちですね。プログラムの作り方や、スケジュールの相談、一緒にアイテム作りをしたりなど、細かい部分もサポートしています。あとは、当日ですね。さすがに新郎新婦はプロデューサーに回れないので、そこの部分で代わってまとめたり、進行を担当したり、荷物の運搬からハイエースの運転まで、結局何でもやってますね(笑)。
━━まさにフルサポート(笑)。これって全国各地で開催してるじゃないですか。普通の式場って、開催のノウハウがあって、どういう人が来ても対応できるようになってるんだと思うんですけど、大沼でやる場合もあれば東京でってこともあると、例えば花屋さんはどうするとか、食事をどうするとかってのは、その都度組み立てなきゃいけないわけですよね?
葭葉:その辺は、新郎新婦のご友人が担当する場合もあれば、ツテだったり、 SNS での呼びかけで手配してますね。
━━じゃあ、ウエディングごとにチームができて、終わって解散みたいな。
葭葉:そうですね。毎回、火は使えるか、音は出せるか、屋根はあるかという現場 確認から始まるので、なかなか 大変なんですけど(笑)。一応、同じ会場だとある程度、想定ができるので、そういうところは連携フィールドという かたちで、紹介させてもらっています。その中から選ばれる方もいれば、「自分の実家のぶどう畑でやりたいです」など 、本当に様々なパターンがありますね。
━━まさに世界でひとつだけのウエディングを作っていくってことなんですね。ホームページには、「2人のウエディングを通じて地元との繋がりを生み出す」といった理念が掲げられていますが、具体的にはどんなことを実施されているのでしょうか?
葭葉:全体的にそうなんですけど、結婚式って平均 100 人規模で、地方だと一泊とかになるので、交通面のアクセスから、宿泊、お料理、ヘアメイク、カメラマン。あとはその土地土地で、大沼だとカヌーの演出などをする場合には、地元の方と提携したり、その土地の文化や特徴を活かすことを意識して進めています。
━━細かい部分も積極的に地元の方にお願いすると。
葭葉:そうですね。どうしても見つからない場合は、東京から呼ぶこともあるんですけど。あと、新郎新婦が東京のアーティストさんを呼びたいという場合もあります。だけど、それはそれで面白くて。地域に違う色が入ってくるというか。
前に新島でアウトドアウエディングを開催したんですけど、その時は東京の料理家さんを呼んで、地元のおばちゃん達の料理チームも一緒になって、新島の郷土料理と、地元の食材を使って東京の人が作った創作料理を出したんです。
あとはフラワーアーティストの方がいて、新婦のお父さんと一緒に山で花を収穫して、それで装飾するとか。この花はお祭りの時に魔除けの意味合いで玄関に飾るとか、そういう土地の文化を準備過程で聞けるのも楽しみのひとつです。
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