ファッションデザイナーとして、自身のブランド『Mady Mady』を運営している今泉円花さん。独自の世界観が詰まった洋服を作り続け、きゃりーぱみゅぱみゅさんや、はるな愛さんに衣装提供を行うなど、徐々に活躍の場を広げています。
幼い頃からオシャレに関心があったという今泉さんですが、高校生の時に飲食店で「わっ! でっかいリボンつけたヤツ入ってきた!」と指をさして言われたことがショックで、「私、函館にいちゃいけないんだ」と思うようになったといいます。今は東京で自分を解放できる場を見つけ、思い通りに表現することの楽しさを知ったという今泉さんに、ファッション好きをひた隠しにしていた幼少期のことや、高校生の時に味わったファッションに対するトラウマ、ストーリー性を意識した服作りについて伺いました。
取材・文章:阿部 光平、撮影:馬場 雄介、イラスト:阿部 麻美 公開日:2016年5月13日
ファッションの深さを知るきっかけとなった〝コンセプトの打ち出し方〟
━━ここで改めて、服作りについて聞きたいんですが、学校ではコンセプトの立て方や、デザインのアプローチの方法を学んだということでした。それを踏まえて、『Mady Mady』では、どのような服作りをしているのでしょうか?
今泉:まずは、そのシーズンのコンセプトを決めるところから始まります。その時間が、すごく楽しいんですよね(笑)。
最近のものだと、〝Illness(病気)〟ってコンセプトでコレクションを発表しました。お姉ちゃんが看護師なんですけど、ナース服って可愛いよなって思ってて。看護師、ナース、ナイチンゲールって調べていって、図書館で関係書籍をたくさん読んで、そこからイメージ画像とかをたくさん集めるんです。それを、部屋に並べて、「どういうことを伝えたかったんだっけ?」っての考えながら、コンセプトを煮詰めていきます。
今回だと、〝優しさ〟を伝えたいなって思って。看護師さんには優しい思いで人を治そうっていう暖かい部分があって、患者さんには病気と向き合っているという辛い気持ちだったり、負の部分があるんだろうなと思って。そこからイメージを膨らませてプリント生地を製作し、服に仕上げていきました。
━━具体的にはどんなアイテムを?
今泉:病院ってみんな同じ病院服みたいなのを着てるじゃないですか。それって精神的にどうなんだろうって思って、もっと病院内でも可愛い服があれば患者さんだって気分が上がるし、嬉しいよなって。それで寝巻き風の服を作ったりしました。ちゃんちゃんこみたいなものだったり。
あとは、リボンをガーゼで作って、誰かが怪我をしたら、これで手当てできるよとか。パンツにもブルゾンにもポケットが付いてて、摘んだお花を入れられるような作りにしたりとか。他には、袖口のボタンをリボンに変えた服を作りました。ボタンと違ってリボンって片手じゃできないじゃないですか。そこをあえてリボンにすることで、誰かに結んでもらうという仕掛けにするっていう。ちょっと繋がりを持てるようなデザインを意識しましたね。
━━かなりストーリー性のある服が多いんですね。ポケットにしても、袖にしてもメッセージ性が強いというか。
今泉:そうですね、メッセージ性を込めた服作りは意識してますね。そういう部分に目を輝かせてくれるお客さんは多いんですよ。「そんな意味があるんだ」とか「それ言わないと伝わらないですよね」みたいな(笑)。
━━ちなみに、その前のシーズンはどんなコンセプトで服を作ったんですか?
今泉:『白鳥の湖』です。〝演じることで見せる自分〟ってのと、〝着飾ることで見せる自分〟って近いのかもなと思って。
白鳥にしても、黒鳥にしても、役柄によって衣装とかメイクとかが全部違うじゃないですか。そういう変化があるから、白鳥の気持ちになって、優しい心になれるんだろうなとか。反対に黒鳥の衣装とかメイクだとけっこう鋭い気持ちになれるんだろうなとかってのを、自分のブランドで表現したいと思って製作しましたね。
━━そういうコンセプチュアルな服作りをしていると、やっぱり固定ファンの方が多かったりするんですかね?
今泉:おそらくそうだと思います。「次にショップやることあったら教えてください」っていうお客さんは多いですね。同時に、通りすがりの人から「何あの服? 着れない!」みたいな声も聞こえきますし(笑)。
━━なるほど(笑)。それはしっかりとターゲットだけに向けているってことでもありますよね。販売の方法についても伺いたいんですけど、例えば大手のブランドって、展示会を開いて、そこで予め注文をとって、それに見合った数を作るってパターンが多いじゃないですか。マディさんみたいに、いきなり店で売る場合というのは、どのようにして商品を作っていくのでしょう?
今泉:作った分だけを持って行って、ショップオープンって感じですね。で、これが売れてるってなったら、会期中に追加で作ったりします。だから、ショップ期間中はあまり寝れないし、ちょっと病んだりしますね(笑)。
━━一見華やかな世界だけど、やってる側としてはかなりハードなんですね。
今泉:実際やってることは華やかってより、むしろ地味ですね。家でひたすらミシンを動かしてるだけなので(笑)。
━━息苦しさを感じていた函館を出てから7年が経ちますが、今の函館はどのように見えてますか?
今泉:前ほど嫌いではないです。会いたい人がいるので。ぶっちゃけ街自体には興味がなくて、地元帰る理由は会いたい人がいるってだけなんですよね。あと、ラッキーピエロとお寿司。
東京の人に出身が北海道っていうとみんな羨ましがるんですけど、地元を羨ましがられるようになって、「あっ、いいんだ! 北海道が地元って」と思うようにもなってきました。今となっては住もうとは思わないけど、魅力的な街だとは思います。
━━外の人から客観的な評価を聞いているうちに、いいなと思うようになったと。「価値の逆輸入」みたいな。
今泉:ですね。街としては、早い時間に店閉まっちゃうし、遊ぶところも限られてるじゃないですか。そもそも遅い時間は電車なくて、帰れないし。でも、最近は帰って家族で函館に観光に行くんです。西部地区の旧イギリス領事館とか。高校生の時は通学路だったけど、今改めて歩いてみると、楽しいなって思ったりしますね。
あと、帰るたびに、友達が楽しいスポットを発掘してくれたりしてて、まだまだ私の知らない部分があるんだなーって思わされたりもします。
━━高校生までしかいないと行動範囲が限られてるから、意外に知らないことがたくさんありますよね。では、最後に今後のビジョンを聞かせてください。
今泉:お金の面でも大変だし、辞めて違う道に進んだ方が幸せなのかなって思ったりすることもあったんですけど、今は応援してくれる人がいるから辞めたくないって思ってます。
だから今後は、体制を整えて、活動を幅を広げていきたいですね。
━━自分のショップを持ちたいという願望は?
今泉:ないんですよ! 自分のブランドを置いてもらえるショップがあるってのは理想ですけど、自分のショップを持ちたいって思ったことはないですね。
私は「表現」がしたいって思うんです。こういう表現をしたい。それを人に届けたい。って気持ちがずっとあるんですよ。
━━ずっと作り手でいたいと。
今泉:そうですね。これからも頑張って作ります!続けることに意味があると信じています!
MY FAVORITE SPOT
「いつも歩いている道が雪で覆われている様子が好きで。しかも、周りに誰もいなかったりすると、幻想的な気持ちになります。夜はライトアップもきれいですよね」
「すごい楽しいし、おいしい!釣って、家に持って帰って、天ぷらにします。2月くらいから大沼のホームページに「ワカサギ釣りはじめました」みたいな告知が出るんですよ。冬に帰ると必ず行きます」
「流れるプールとかはなくなっちゃったんですけど、温泉施設は健在で。風情のある温泉ではないんですけど、けっこうきれいで、地元の人でかなり賑わってるんですよ。名前は〝七重浜の湯〟に変わったのかな」