■遊ぶ余裕がどこにもないキャンパスライフ

━━流通経済大学のキャンバスは、どこだったんですか？
西川：茨城県の龍ケ崎市というところです。そこで寮生活をしてました。

━━街の印象はいかがでした？
西川：大学の場所がけっこう田舎だったんで、五稜郭とかに比べるとまだ函館の方が都会でしたね。
有名なヤンキーがいるような街で、改造した車とかバイクが、じゃんじゃん走ってました（笑）。

━━それはそれで、都会に出てくるとは違ったカルチャーショックですね。寮生活はいかがでした？　門限が厳しかったりとかって感じなんですかね？
西川：そうですね、夜９時か９時半に点呼があって、全員の名前を確認してって感じで。そのあとはフリーだったんですけど、翌日は６時くらいから朝練があるので、あまり遠出とかはしなかったですね。

━━生活のサイクルは、どのような感じだったんですか？
西川：朝練をして、寮に帰ってきて朝ご飯食べて、学校で講義を受けて、時間あったら寮帰ってきて寝て、夕方も練習をして、寮で晩ご販食べて、寝るって感じですね。

━━めちゃくちゃハードですね。完全にラグビーが中心の生活というか。
西川：１年生の時は、大学のシステムとかよく分かってなくて、練習がきつくて寮で寝てたり、授業をさぼったりしてたので、単位が大変でした（笑）。

━━遊ぶ時間も全然ない感じですか？
西川：大学の時はほんと遊んでないですね。１年生の前半は休みのたびに東京に出かけて、服を買ったりとかしてましたけど、それ以降はパタッとなくなりましたね。とにかく休みたかったですし、だいたい服買っても着る場所無いなみたいな（笑）。学校でも寝間着みたいな格好でしたから。

━━なるほど（笑）。当時は試合にも出場していたんですか？
西川：部員が１５０人くらいいるんですけど、春の段階で何度か試合をやって、Ａチーム、Ｂチームっていうふうに選手をランク分けしていくんですよ。当時、僕は身長が１８５センチくらいあったんですけど、チームにあまり背が大きい選手がいなかったのもあって、１年でＣチームに選んでもらったんです。
トップチームは８月に北海道の北見と、長野の菅平で合宿を行うんですけど、そこになぜか僕も呼んでもらえたんですよね。

━━期待の新人だったわけですね！
西川：でも、前の年に１年生として合宿に参加した先輩は、もう毎日泣いてたとか言うんですよ。１年生だから練習にも参加するけど、下働きもさせられるので。だから、行くのヤダなーと思ってて。先輩も恐いし（笑）。

━━えっ、断ったんですか？
西川：旅費が自腹で何十万とかかるので、とりあえず親に相談したんですよ。そしたら、合宿費を払ってくれるって言ってくれたんですけど、僕的には「家計的に無理です」って断ろうと思ったんですよ（笑）。

━━合宿に行きたくないがばっかりに、嘘の理由をでっち上げて（笑）。
西川：いや、選ばれたこと自体は、光栄なことなんですけどね（笑）。で、コーチに「お金がないから辞退させてください」って言ったら、「はあ？」みたいなことを言われて（笑）。「どうにかする！」って。

━━恐いな（笑）。じゃあ、費用は学校やコーチが負担してくれたんですか？
西川：結局、払ってくれるとかはないんですけどね。だけど、逃げ場はないなと思って、観念して参加することになったんです。

━━実際の合宿はいかがでした？
西川：練習はキツイし、みんなが昼寝してるときも雑用をこなさなきゃいけないし、めちゃくちゃ大変でしたね。けど、そっからはずっとＢチームでやらせてもらって、２年の時にはＡチームに入ることができました。

━━先からお話を聞いていると、大学のチームの上下関係はかなり厳しかったようですね？
西川：僕が１年生の時の、４年生がめちゃめちゃ厳しくて。１年がだらしないと〝しぼり〟ってのが行われたんですよ。

━━〝しごき〟みたいなことですか？
西川：そうですね。寮に「１年生、今から○分後に練習着に着替えてグラウンドに行け」みたいな放送が流れるんです。で、グラウンドで待ってると、４年生が車で来るんですよ（笑）。

━━車で来るんですか!?　その時点でかなり恐い（笑）。
西川：最初の時は、特に何も起こらず「今日はもう帰っていいよ」みたいな感じになったんですけど、次の日の朝練に同級生のひとりが寝坊したんですよ。それにもう４年生がキレちゃって、次の日にまた放送が流れて。

━━「さっさと着替えてグラウンドに来い」と（笑）。
西川：そうです、そうです（笑）。で、実際に、ひたすら走らされたりとか、ずっと腕たせ伏せさせられたりとかして。アレは、本当にキツかったですね。

━━聞いてるだけで、疲弊しそう（笑）。
西川：思い出したくもないですね（笑）。冬に大学選手権って大会があって、その１回戦を突破したら、チームは年を越すってことになるんですけど、年を越したらまた〝しぼり〟があるって噂が流れたんですよ。

━━ヤバイ予感がしますね。
西川：１年生の何人かは、そうなったら実家に逃げるって言ってたんですけど、僕としてはせっかく大学行かせてもらったのにこれで辞めるわけにもいかなったので、朝、誰も起きていない時間に寮の裏手にあった神社に行ったんです。そこで、賽銭を入れて「どうか負けますように！　どうにか負けますように！」って祈って（笑）。

━━冗談みたいな話ですね（笑）。
西川：いや、本当にやってたんですよ。必死で（笑）。そしたら、ボロ負けして、年を越さないまま終わりましたね。

━━さっきから聞いてると、ラグビーを愛してるのか愛してないのか分からなくなるんですけど（笑）。
西川：いや、ラグビーは愛してるんですけど、先輩が本当に恐かったんで（笑）。