俳優として、映画やテレビドラマを舞台に活躍する町屋友康さん。幼い頃から目立ちたがり屋で、リーダー気質だったという町屋さんは、その恵まれた長身を活かして、札幌でモデルデビュー。さらに活動の幅を広げるため、24歳のときに東京へと拠点を移しました。そこで待ち構えていたのは、想像よりも遥かに厳しい世界だったといいます。やっとの思いで手にした主演舞台での演技を全面的に否定され、一度は足を洗うことも考えたとか。しかし、現在は、激しい競争が繰り広げられる中で、荒波に揉まれながらも、俳優としてのキャリアを着実に積み重ねています。
夢は「函館を舞台にした主演映画」と語る町屋さんに、知られざるオーディションの内容や、バイトをしながら役者を続けるという俳優業の実情、消えかけていた情熱を呼び起こしてくれた有斗高校ラグビー部OBとの運命的な出会いなどを語っていただきました。
仕事を得るためにオーディションを繰り返す〝俳優〟という職業
━━はじめに、今のお仕事について教えて下さい。
町屋:映画、テレビドラマ、舞台の3つを軸に、俳優業をしています。
━━俳優さんのお仕事というのは、どういう流れで決まっていくものなんですか?
町屋:基本的には、すべてオーディションです。まだまだ「町屋さん願いします!」って、名指しでオファーがくるようなレベルには達していないので。
━━オーディションというのは、具体的にどんなことをするのでしょう?
町屋:だいたい2パターンくらいあるんですけど、ひとつは台本を渡されて、じゃあ30分後に実演をやりますってパターン。もうひとつは、その場で題材だけを与えられて、即興で演じるというパターンです。最初と最後だけが決まっていて、その間を自由に演じてみてくださいっていう。いずれも、演技の幅や、ボキャブラリーの多さを試される感じですね。
━━まさに〝演技する力〟を試されるということですね。
町屋:そうです。ただ、やっぱり役に合ったイメージというのは大切で、演技が60点でも、役柄にピタッとハマる人が受かるってことはあるんですよね。だから、数をこなしていかないと、仕事には繋がらないというのが実情です。
━━つまり、制作サイドが求めているビジュアルの役者さんがいれば、演技力の有無を飛び越えて合格してしまうこともあると。
町屋:そうですね。だから、まず書類審査があって、そこを通らないと何も始まらないんです。
一度、事務所に「なんでこんなにオーディションが少ないんですか?」って聞いたことがあるんですよ。そしたら「いや、お前の資料は、いろんなところにいっぱい出してる。でも、書類が通らないんだ」って言われて。それくらい、見た目とかも重要なんですよね。
━━ちなみに、俳優さんが制作サイドに送るプロフィールには、どんな項目があるんですか?
町屋:写真、名前、年齢。それと、3サイズですね。細かいことをいえば足のサイズとかも書いてますけど。
あとは、芸歴。過去の出演作だとかも、当然必要になります。経験が少ないとオーディションにも呼んでもらえないということも多いので、芸歴というのもやっぱり重要なんですよ。
━━〝芸歴=スキル〟って捉え方なんですかね。例えばスポーツとかだと、経験が浅くても、めちゃくちゃ上手い人っているじゃないですか。
町屋:その辺は、製作サイドによって違うんですけど、〝芸歴=スキル〟と解釈されることがあるのは事実ですね。
━━町屋さんは、どういう役柄のお仕事が多いんですか? 得意なジャンルみたいなのがあれば教えて下さい。
町屋:得意なジャンルってわけではないですけど、サラリーマン役とかが多いですね。あまり悪役とかはなくて、どちらかといえば爽やかサラリーマンみたいな役が。本当はもっといろんな役にトライしたいんですけど。
━━最近の出演作は、どんな作品ですか?
町屋:最近だと、『陽光桜』という、終戦70年記念の映画に出演させてもらいました。ワンシーンだけなんですけど、官僚の役で。
今、公開が控えているのは『シマウマ』という漫画原作の映画ですね。こっちは、エリートサラリーマン役でした。
━━さきほど、過去の出演作が重要な要素のひとつだというお話がありましたが、そうなってくると似たような役が続くんですかね? 官僚、エリートサラリーマンといった感じで。
町屋:そうですし、そういう役でキャスティングされる理由もわかるんですよね。まず、僕は見た目がそんなに悪そうじゃない。割とカッチリ系というか、清楚な感じっていわれることが多いんですよ。だから、必然的にそういう役が多くなるという部分はあります。
━━やはり見た目が、役柄を大きく左右することもあるんですね。オーディションを受ける際、役作りとして髪型をかえたり、ひげをはやしたりっていうアプローチの仕方もあるんですか?
町屋:その役に合わせた髪だとか、そういうのは意識しますね。あとは体型ですね。
前に、TBSの連続ドラマ『Dr.DMAT ~瓦礫の下のヒポクラテス~』というテレビドラマにレギュラー出演させてもらったんですけど、そのオーディションを受けた頃、ちょうど体を鍛えていたんです。そういう部分も評価されて、災害レスキュー隊員の役をもらえることになったので、体型のことは常に気を使っています。
もちろん、見た目ばかりに気を使っててもダメなんですけど。
━━そういう仕事の仕方を聞いていると、日々受験を繰り返しているような感じですね。
町屋:まさに、そういう感じです。受験終わったけど、またすぐ受験みたいな(笑)。やっぱり、オーディションを受けるたびに、課題が見えてくるんですよ。今の自分にどういうものが足りてないかがわかるから、次はそれをクリアしていこうと。
演技の練習って、ひとりでやってても何も緊張しないんです。だけど、人前で演じるとなった途端に全然別のものになるんですよね。だから、普段から人の前で何かするときには、見られていることを意識するようにしています。
今、和食屋さんでバイトをしてるんですけど、一応、店を任されてる立場なので、スタッフの前で話をすることもあるんです。そういうときにも、演技の訓練というつもりで話をしています。そうやって日常の中に課題を見出しながら、力をつけていくのが、今の自分には一番必要なことだと思っているので。
━━課題を発見するというのは、次のステップに進むための第一歩ですもんね。
町屋:もう、年齢も32歳なんで、危機感みたいなのもあるんです。実は、ここ数ヶ月の間に、「もう、役者辞めようかな」って思ったこともあったんですよ。