■「目立つより目立たせたい」という持って生まれた編集者気質


━━最初に、現在のお仕事について教えて下さい。
木村:WEBの編集プロダクションで、編集者として働いています。簡単に言うとライターさんに原稿を発注して、上がってきたものを記事として整理し、クライアントの方に納品するというのが業務の内容です。クライアントさんの要望を聞いて、課題をどう解決したらいいのかという部分を考え、その最適解を記事として提供するという仕事だと思っています。

━━WEBメディアにおける記事コンテンツの制作業務といった感じですかね。ご自身で記事を書かれることもあるんですか?
木村:あります。自分で取材して、記事を書くことも。あと、WEBの媒体ってライターさんにカメラスキルが求められることも多いので、写真のことも少し勉強しています。編集者の立場からすると、写真を撮れるライターさんってすごくありがたいんですよね。だから、自分でも記事と写真は最低限できるようにしておきたいなと思ってて。

━━記事と写真をまとめて発注できれば、予算も労力も抑えられますもんね。WEB編集という仕事に就かれたのは、いつ頃ですか?
木村:編集プロダクションではないんですけど、前職もWEB事業部みたいなところで編集業務をやってたんですよ。会社が高円寺だったので、高円寺の地域密着型WEBマガジンや、賃貸のお家を扱うサイト、メーカーさんと一緒に美容系のメディアを作ったりしていました。そこで働き始めたのが、2014年の5月頃ですね。

━━もともとWEBの編集やライター業務に携わろうと思ったきっかけは何だったのでしょう?
木村:もともとはWEBに関する知識もなかったし、まさか自分がWEBの編集者になるとは思っていなかったんです。編集者という仕事を知ったのは、札幌で社会人をしていたときで、同僚に誘われて雑誌の取材に参加したのがきっかけでした。札幌を含む全国各地で〝女の子のコスメポーチ拝見〟みたいな企画があって、協力させてもらったんですけど、その時に初めて雑誌の取材現場というのを目の当たりにして、「超楽しそう!」と思ったんですよね。
それまでは、読み手として女性誌がすごく好きだったんですけど、現場を見たときに「私もこういう仕事をしてみたい!」って思ったんです。それからいろいろ調べていくうちに、編集者っていう仕事があることを知って、「よし、じゃあ東京だ!」と。それで、仕事を辞めて、実家のパン屋さんを手伝いながらお金を貯めて、2014年の5月に上京しました!

━━編集者という仕事を知ってからの勢いと行動力がすごいですね(笑)。
木村:〝憧れ〟というパワーですね(笑)。最初は仕事を決めずに出てきたんですよ。東京に行けばなんとかなるだろう精神で(笑)。それで、たまたま函館を出る3日前に前職の求人を見つけて、上京してすぐ面接を受けて、一週間後には働かせてもらっていました。
もともとは雑誌の編集者に憧れていたんですけど、雑誌の編集部って間口がすごく狭くて、未経験者で入れるところがなかったんですよね。なので、まずは〝編集〟という仕事を経験することが大切だろうと思って、WEBの世界に飛び込んだんです。

━━前の会社は経験を問われることはなかったんですか?
木村:そこはラッキーだったんですけど、ちょうど会社が成長過程にあって、手が回らないような状態だったんですよ。だから、未経験でも入社させてもらえて、色んな経験をさせてもらいました。

━━編集という経験がない中で、具体的にはどういう業務を担当されていたのでしょう?
木村:最初は美容室の取材に連れて行ってもらったりして、ひたすらメモをとってましたね。それをテキストに書き起こして、先輩に渡すといった仕事だったんですけど、2回目くらいの取材で「もうちょっと体裁整えたら記事になるからやってみて!」って言われて。「えぇー! マジですか!?」って思いながらも自分なりに書いてみて、それを直してもらうみたいな毎日でした。



━━お話を伺っている限り、順調にWeb編集者としての道を歩き始めたという印象ですが、前職を辞め、現在の会社に転職した理由は何だったのでしょうか?
木村:前の会社は、クリエイター気質で、尖った人が集まる集団だったんです。中心にいた編集長もフリーライターとして活躍してた人で、良い意味ですごくクレイジーというか、誰も思いつかないような企画をポンポン出せる人で。そういう面白さに魅かれて、近くにいると自分も面白いことができるようになるかもしれないって思っていたんですけど、入社から1年が経った頃に「基礎が身についていない」ということに気づいたんです。
というのも、編集長の方針ですごくのびのびと働かせてもらっていて、権限とかも与えてもらっていて、全体的に「自分の判断でやっていい」という体制だったんですよ。それって信頼の証だし、何かあったら尻拭いはするよっていう感じだったんですけど、その状況がすごく恐くなっちゃって。WEB業界の人たちと繋がっていく中で、「他の会社での1年と、私が過ごした1年にはかなり差があるぞ」って思うようになったんです。

━━スキルをイチから教えてもらうというより、「仕事は見て学べ」みたいな職場だったんですね。現場主義というか。
木村:はい。応用から教わるというか、瞬発力で鍛え上げるみたいな。私は、そういうのが苦手なタイプだったので、それなら編集を基礎から教えてもらえるところに行ったほうがいいなと思って。
それで、仕事を辞めた後、2ヶ月ほどフリーランスとして活動していた時期に、今の社長から声を掛けていただいて、転職することになったんです。

━━実際に、編集者という仕事を始めてみた感想はいかがですか? 憧れていたイメージと近い部分も、違っている部分もあると思うんですが。
木村:編集者の仕事って、答えがないところがあって、それぞれの美学があると思うんですよ。今の会社は全員が編集者なんですけど、みんな大事にするところがバラバラなんです。同じ原稿を出してもピックアップするところや、修正箇所が違うっていうのがすごく面白いですね。今は、自分の美学に近い人を見つけてそれを真似するじゃないですけど、取り入れていくのが大事かなって思っています。
もともと憧れていたのは、ファッション誌の編集部にいるような、キラキラした感じの編集者だったんですけど、今はもっともっと現実的な職業として捉えていますね。ただの憧れだったところから、この仕事で生きていくために自立していきたいなという気持ちです。
何よりすごく楽しいですし、自分に合ってる仕事だなと感じています。

━━自分に合ってると感じるのはどういった部分ですか?
木村:私、割と博愛主義で「みんないいよね」って思うんですよ。なので、人の話を聞くとその人のことをすごく好きになるし、物の取材をするとその物のことをすごく好きになるんです。だから、この仕事を続けていると、世の中を愛せるような気がして(笑)。
昔から、〝自分が外に出て目立つ〟というよりは、〝自分が手伝うことで誰かが目立ってほしい〟という気持ちがあるんですよ。人の役に立ちたいというか。自分の原稿が喜ばれるのは嬉しいんですけど、自分がお手伝いした記事が喜ばれる方がもっと嬉しいし、記事自体よりも、記事によって取材元が注目されることに喜びを感じるんです。そういう部分でも編集者という仕事は向いているなと。
まだまだ実績は少ないですけど、もっともっと自分がお手伝いしたことで注目される〝人〟とか〝物〟とか〝事〟が増えたらいいなと思っています。





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